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手をつなぐ

日々のこと、好きなもののことなどツラツラ書きます。

スモーキー・マウンテン

先日、梅田のNU茶屋町にスタンダードブックストア2号店が
できたというので覗きに行った。
ベストセラーを置かない本屋さん、スタンダードブックストア。
心斎橋の本店では、BGMでノラ・ジョーンズが流れてたりと、
店内雰囲気や音楽、雑貨のセレクトまで
私のツボを刺激しまくる素敵な本屋さんなのです。
初めて行った梅田店は心斎橋店より明るい雰囲気で
カルチャー系の本が充実してる印象。
入口付近に写真集とか音楽系の本が集まってた。
梅田近郊のみなさん、是非。

・・で、すんごい本見つけた。
ちょっと今日はそのご紹介を。
名越啓介さんという若き写真家の写真集『SMOKEY MOUNTAIN』。
フィリピンのマニラにあるスラム街・スモーキーマウンテンを10年かけて
撮った写真集。

以下、スモーキー・マウンテンの概要(by wikipedia)
スモーキー・マウンテンSmokey Mountain)とは、
フィリピンマニラ市北方に位置するスラム街のことである。
名称の由来は、自然発火したごみの山から燻る煙が昇るさまから名付けられた。
かつては海岸線に面した一漁村であったが、1954年に焼却されないゴミの投棄場になった。
それ以来からマニラ市内で出たごみが大量に運び込まれ、ゴミの中から廃品回収を行い
僅かな日銭を稼ぐ貧民が住み着き、急速にスラム化した。
1980年代後半頃から、フィリピンの貧困の象徴として扱われるようになった。
政府は、国のイメージが損なわれることを理由に閉鎖を決断。
住民は、公共住宅をあてがわれ強制退去させられたが、
一部の住民はスモーキー・バレーをはじめとする別の処分場周辺に移り住み、
従来通りのスカベンジャーぶりを発揮している。」

・・

大体、本を選ぶときは直感。
引き寄せられるように手にとることが多い。
特にアート系の本はそうだ。
この写真集『スモーキーマウンテン』もそう。
表紙を見た瞬間、ぐわっと心を捉えられ、それから一気にページをめくり、
気づけばレジへ直行していた。
背筋がざわざわした。
大きな袋を片手にゴミ山をあさる無数の人びと。
血痕のついた道。
薄汚れたタオルの中からのぞく幼児のものと思われる手。
抱き合う父と子。
半裸で水を浴び、白い歯を見せつけるように思いっきり笑う少年たち。
すごい生命力、すごい熱気。
一枚一枚の写真を通して伝わってくる熱量がハンパない。
写真という媒体の力を見せつけられるような、そんな写真集。

これはあくまで自分の価値観やけども、
日本という国で写真を「見せる」、写真で「勝負する」ならこういうのじゃないと、と思う。
写真を撮るというのがすごく日常的な営みであるこの国で、
綺麗なだけの写真撮って、それ見せたって仕方ないよなぁって。
(自分もそんな大した写真撮れてない自覚の上での発言ですが。)
だって、写真ってそこに実在する物や存在を切り取るわけやから、
その部分ではどうしたって個々人の実体験に勝ることができないと思うのです。
仮に美しい桜の花を撮ったとして、
やっぱり桜を直に見てその場の空気に触れてみた感動には
どうしたって勝てないよなぁと。
(これもあくまで自分の価値観ですが。)

そういう意味で、写真集『スモーキーマウンテン』は
東南アジア諸国に住む人が見たら、
もしかしたら「ふーん」ていう感じなのかもしれない。
「ああ、スモーキーマウンテンね、あそこはひどいところでぇ」みたいな。笑
でも、日本に住む人間にとってはハンマーで脳みそぶん殴られるくらいの
圧倒的パワーを持った写真集だと思う。
ページをめくりながら、一枚一枚の写真をたどりながら、
自分という存在が問われる。
ナマぬるく生きてんじゃないかって。
全力でやってるか?って。
明日死ぬかもしれないってそんな中で感じる「生」と、
明日もたぶん生きてるってそんな中で感じる「生」と。
集中力が違う気がして。
限られた人生、バカげたことはやめようって思ったし、躊躇すんなよって思った。
見ながら。
少なくとも、私は。

あと、少しだけ。

写真集には棺桶に入った子どもの写真やドクロの写真も出てくる。
泥まみれの裸の男の子、ゴミの中で暮らす人びと。
どうしてこんなに貧富の差が激しいのか。
フィリピンという国の歴史の中にそのヒントは隠されている。
以下、写真集の巻末に記された解説からの引用。
「フィリピンは常に大国の利害に振り回され、植民地主義、帝国主義、
資本主義の犠牲であり続けた。
その抑圧の歴史が国家としての近代化を阻み、現在のフィリピン社会を
未だに呪縛し続けている。
極端な格差社会、腐敗した政治構造、アナーキーに近い治安・・・。
ただ、この国家としての未熟さがフィリピンの独特の文化、社会構造を
育んだといっていい。」

劣悪な環境、管理のされていない"危険"な場所、スモーキーマウンテン。
でもそこは生命力のほとばしる、人間そのもののパワーが全開に溢れた場所でもある。
管理の行き届いた一見"平和"なこの国で生きる私は
それを見て何を感じ、学ぶべきか。
もう一度ゆっくり見直そう。
これから何か迷ったら、この写真集を開こうと思う。

・・熱い。
久々に写真見て、熱い!!って思った。


スモーキー・マウンテン』、オススメです。



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