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道東へ4 北方民族とクマの話

今日偶然、韓国からの留学生と思われる女の子二人の
楽しげな会話を聞くことができた。
いわゆるガールズトーク。

「化粧水は何使ってる?日本製?」
「やっぱり日本製は質がいいよぉ。あ、でもクリームは韓国製のがいいけど」
「てか、前会った立命館のオッパ(お兄さん)、かっこ良かったよね」
「思い切ってこっちから連絡しちゃいなよー絶対いけるって!」
「あー、やっぱり私、背の高い人がいい!あのオッパ背が高いからいいの」
高音かつ早口の韓国語で交わされる会話。

その会話に時たま耳を傾けながら、
ひたすら『北方民族を知るためのガイド』を読んでいた私です。

・・さて。

北方民族の話、してもいいですか?笑

北方民族の文化ではクマが神聖視されている。
このことは「道東へ2」でも書いたとおりなんやけど、
これは北方で暮らすほぼすべての民族(アイヌもイヌイットもその他すべて)に
共通することであるらしい。

これは実は朝鮮の建国神話にも通ずる話で・・・。
古朝鮮(コヂョソン)という国の建国神話にもクマが重要なキーワードとして出てくる。 


以下、建国神話の内容。(読みにくい人は飛ばし読みどうぞ。)
  
『三国遺事』が引用する「朝鮮古記」によれば、桓因(かんいん、환인、ファンインないしファニン)の庶子である桓雄(かんゆう、환웅、ファンウンないしファヌン)が人間界に興味を持ったため、桓因は桓雄に天符印を3つ与え、桓雄は太伯山の頂きの神檀樹の下に風伯、雨師、雲師ら3000人の部下とともに降り、そこに神市という国をおこし、人間の地を360年余り治めた。
その時に、ある一つの穴に共に棲んでいた一頭の虎と熊が人間になりたいと訴えたので、桓雄は、ヨモギ一握りとニンニク20個をあたえ、これを食べて100日の間、太陽の光を見なければ人間になれるだろうと言った。

虎は途中で投げ出し人間になれなかったが、熊は21日目に女の姿「熊女」(ゆうじょ、웅녀、ウンニョ)になった。しかし、配偶者となる夫が見つからないので、再び桓雄に頼み、桓雄は人の姿に身を変えてこれと結婚し、一子を儲けた。これが檀君王倹(壇君とも記す)である。
檀君は、堯(ぎょう)帝が即位した50年後に平壌城に遷都し朝鮮(조선)と号した。
以後1500年間朝鮮を統治したが、周の武王が朝鮮の地に殷の王族である箕子を封じたので、檀君は山に隠れて山の神になった。1908歳で亡くなったという。
(wikipedia 「檀君朝鮮」より引用)


上の話を口語調でわかりやすく説明したのをweb上で発見したので
引き続き興味ある人はどうぞ。

「むかしむかし、天帝の桓因(ファンイン)という神様と、
その息子の桓雄(ファヌン)という神様がおったそうな。
2人の神様は平和な生活を送っていたんじゃが、
桓雄はいつも地上の人間界のことが気になってたそうな。
そこで、桓因は桓雄に天符印を3個与え、天から降って人間界を治めさせることにしたのじゃ。
桓雄がお供を連れて降り立ったのは太白山という場所じゃ。
その時、太白山の洞窟の中に住んでおった熊と虎が、桓雄に対してこう申したのじゃ。
「自分達を人間の姿にして下さいませんか」と。
そこで桓雄はモグサ1束とニンニク20個を与え、
「これを食べながら100日間日光を避けて過ごせ」と仰った。
それから21日経った日のこと、熊は女の姿になったそうじゃ。
女の姿になった熊女(ウンニョ)は、その後「子供が欲しい」と桓雄に願い出たのじゃ。
そこで桓雄は熊女と一晩を共にした。すると、熊女は男の子を産んだではないか。
2人の間に生まれた子供は「檀君王倹」と名付けられたのじゃ。」

・・

虎は逃げ出し、熊は人間となった。
そして人間となった熊は神と共に人間を産んだ。
北方民族にとっても朝鮮民族にとっても“クマ”はどうやら神聖な生き物であるらしい。
それにしてもなぜクマなのか。
網走から阿寒湖へと向かう道中、父と二人でこのことについてしばし話し込んでいた。

アイヌの人びとはクマを捕まえたとき、子グマはその場で殺さずに村につれてかえり、
神として1年ほど大切に育て、クマ送りの儀式の時に神の国へ送りかえしたという。

・・今ね、『アイヌ文化の基礎知識』を取り出してみた。
この本、すごい詳しくって。
P159「クマ祭りとは何か」。
あった!

「クマは神の国からやってきてこの世でクマという形に化身し、人間界を訪れにきた
食料の神なのです。
山で射った成獣にしろ、飼育した子グマにしろ、神の国からやってきて
クマという現世の姿に化身して人里を訪問しに来たとアイヌの人々は考えました。
山でクマ猟をするときも、決して殺すという観念はなく、
あくまで"出迎えにいく"、"受け取りに行く"というのです。」

ほぉー!!

あ、しかも、クマだけじゃない、シマフクロウの霊を送る儀式もあったんや。
絶滅したエゾオオカミやワシやタカも丁重に送られていたらしい。

「アイヌの人々はこの世に存在するすべての事象には魂が宿っていると考えていました。
乱造、余剰生産というのは、かつての人びとの間にはあるはずもなく、
あくまで必要だから作る、それが人間の暮らしに大きく貢献するという観念ですから、
壊れたり、年数が経って古くなったり、種々の理由で必要がなくなれば、それは
そのもののこの世における役割が終わったのだと考え、神の国に送ってやるのです。
神の国にもどるとまた新しい生命が宿りそこでよみがえるのだ、と考えられてもいたのです」

ほぉ~~~~~!!!!

この話、朝鮮の建国神話にもつながるなぁ。
熊女と神から生まれた人間(檀君)が国を創ったという古朝鮮建国神話と、
クマは神の国からやってきたと理解するアイヌ民族。
同じような意識があったと考えられるよね。
おもしろいなぁ。

ねぇねぇ、それにしても。
北方民族の人たちの精神世界やそれに付随する生活は
すごく 素敵やと思いませんか?
今回の旅ではこれについて実はまた色々思ったことがあったんやけども・・・。


続く。
 


 
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